旧字体の難しさ(一つの新字に複数の旧字がある場合)
現在日本で正式に定められている新字体というものは、常用漢字表によるものです。これは所謂旧字体を整理というか簡略に表記しようとして作られた日本独自の文字なので、日本で創作された字形のものは台湾など古い文字を知っている人が見ても、ちょっとわからなかったりするものもあります。簡略化は漢字の旁を簡潔にしたものが多く、古くから手書きで為された行書や草書の簡略を採用した場合や、民間で自然と生まれて簡略表記されていた字形なども採用されています。
さて、新字体は簡略に表記した故に、今までは別々の文字だったものが同じ1つの文字として、表記されるようになってしまった例があります。
思いつく例を挙げておきましょう。
台
>台(貴人また相手の物や動作に冠して敬意を表す。天台宗の台。)
>臺(高く造った建物や構造物。他)
弁
>辨(物事の区別を見分けること。)
>瓣(花びら。バルブ。)
>辯(ものの言いよう。べんが立つ。大阪べん。)
余
>余(一人称の代名詞。)
>餘(必要な分をこえて残る。あまる。)
虫
>虫(ヘビやマムシなど。)
>蟲(むし全般。
など
いろいろあるので、常用漢字を旧字に単純に変換できない場合もあるのです。
われわれは、日常では新字体を使いますし、僕も新字体で漢字を幼い頃から習ってきたので、まずはこちらを基準に考えて、必要のある時に旧字体に変換するわけです。(たぶん、文字に詳しい学者先生はこういう思考から抜け出ているのだろうと思いますが、)庶民はこういう考え方ですから、常用漢字だと1つの文字なのに、旧字体に変換すると2つもしくは多数の文字が該当する場合には、とても面食らいます。
文字の抱える問題は、新旧の問題だけでなくて、手書きの文字と活字体の問題とか、そもそも伝統的に受け継がれている異体字など、解決しがたい問題がたくさんあるのです。
歴史メモ
1923(T12)年、常用漢字表が発表。(政府が設置した臨時国語調査会が発表)され、正式な場所での略字が示された。
1946(S21)年、当用漢字を内閣が告示。「一般社会で,使用する漢字の範囲を示したもの」である。