篆刻オーダーショップ土抱

常用漢字表を再確認する

2014年1月21日

手書き漢字の字形はどうあるべきか。学校で教えるのはどういう字形がいいのか。と考え、常用漢字表を改めてみてみることにした。WEBサイトでも簡単に見られるしPDFをダウンロードだってできる。
「常用漢字表」(平成22年内閣告示第2号)
文化庁のサイト:http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/kokujikunrei_h221130.html

いろいろと難しいことが書いてあるので、まず用語の意味を再確認しなくてはならない。
字体:文字の骨組みの抽象的な概念。
字形:実際の点画の形。
ということらしい。一応、広辞苑なども見たのだが、曖昧な説明だったので引用しない。光村図書のWEBサイトで触れられているのだが、明確な定義付けが難しいのが現状ということだ。

参考:光村図書「書者でよく出てくる「字体」と「字形」、「書体」と「書風」はどう違うの?」

字形の違いの例としてではないが、常用漢字表「(付)字体についての解説 第1明朝体のデザインについて」に例示されている文字をみると、字形という言葉はどういうことを指しているか分かりやすいと思う。

2014-01-21-22.11

これらの例は字形の違いについて語っている。従って、かねがね気になっているしんにょう/しんにゅうの点は2つで書くべきか1つで書くべきかという問題は、字形の問題ではなく字体の問題と捕らえるべきだ。筆画が長いとか短いとか、パーツが小さいとかいうことではなくて、点が2つなのか1つなのかというのは、文字の骨組みの差異だ。でも、その骨組みの差異を具体的に表現した結果、字形の違いが生まれたということでもある。

書道畑で生きていると、つい「字体」と聞くと、「書体」を思い起こしてしまうが、まったく別方向の用語だ。字体ということばは、こういった文字の字体の話題でもしない限り書道関係者の間でもあまり使わない言葉だろう。

さて、本題の常用漢字表。基本的なことから確認するが、前書き、表の見方及び使い方、に続き本表、付表という構成だ。メインの本表は明朝体系の文字で表記されている。このことからわかるように、そもそも常用漢字表は手書き文字のためではなく、活字(=印刷文字)のためにまとめられていると考えることができる。そして、今回特に注目したいのは「表の見方及び使い方」に続きて掲載されている「(付)字体についての解説 第2明朝体と筆写の楷書との関係について」という項だ。ここで、常用漢字表は明朝体系の文字で示されているが、
「筆写の楷書における書き方の習慣を改めようとするものではない。」
と記されている。そして、印刷文字と手書き文字の表現が違うものを、いくつかのパターンに分類して列挙してある。ここで示されている手書き文字の字形は全て許容すると読み取ってよいのだろう。
字形の違いの例として、下記のような例がある。

2014-01-21-22折り方

 

こういったことは、康熙字典体だとかどうこうでなくて、明朝体系のデザインの特徴でありそういう文化なので、印刷文字(明朝体系)の場合はこのような字形(左側)であって、それを筆写する場合は通常この例(右側)のように書くのが一般的だということが示されており、なんら問題ではない。

では、いよいよ本題の問題を感じる文字については次回記そう。


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