篆刻オーダーショップ土抱

しんにゅうの旧字体ーしんにゅうの点はいくつか?

2014年3月6日

常用漢字表がどういうものかわかってきたので(前回の記事)、漢字の字形について問題を感じる文字をいくつかとり挙げて書いてみようと思う。まずは、
しんにゅうの点はいくつか?

この前知人から、国語の教科書に点がふたつの「しんにゅう」があって、手書きする時にどう書くか迷った、という話を聞いた。
僕の答えは、手書き文字の場合は、すべて点ひとつで書く。ということだ。
ただし、人名などの固有名詞で既に点ふたつのしんにょうを採用している場合には、手書きの場合でも固有名詞に従わねばならない。

活字を使いやすくするために常用漢字が生まれた
常用漢字のしんにゅうはすべて点ひとつで表記されている。もちろん明朝体で。旧字体に対する新しい字体として常用漢字が生まれるに至るわけだが、その際に点画を整理して、特に画数の多い文字がすっきりとした字体になった。しかし常用漢字表に選ばれた漢字はごく一部なので、この整理に該当したしんにゅうの文字たちは、点がひとつになったが、日常での使用頻度が低く常用漢字表に含まれなかったしんにゅうの文字は、旧来のままの点ふたつの活字として残された。

例えば「辻」という文字は、わりあいよく見かける漢字だけれども常用漢字には含まれていないので、活字表記の場合は点をふたつにすべきであるが、フォントには点がひとつのしんにゅうも今時は御丁寧に用意されているので、そちらで通用しているケースも多いようだ。「謎」は常用漢字表に新たに含まれた文字だが、点ふたつのしんにゅうを含む文字として、はじめて点を一つにせずに登録された文字で、ますます混乱を極めているものだ。

明朝体(ヒラギノ)と教科書体

明朝体(ヒラギノ)と教科書体

常用漢字表-謎

常用漢字表の「謎」字

手書きの見本は教科書体と思ってよい
国語の教科書の場合、基本的には教科書体という手書き文字に近いニュアンスのフォントをつかっている。そもそも点がふたつのしんにゅうはないフォントだと思っていたが、今時のパソコン用の教科書体では点ふたつのしんにゅうもあった。(教科書では使われていないはず。)だから、学校の国語の教科書で正しく漢字を学べば、しんにゅうも正しい字体の手書き文字を身につけられる。そして学校の先生は、こういった経緯を理解して、少なくとも活字の字体と手書きの字体は形に違いがあるという現実を伝えなければいけない。

点の数の問題からは外れるが、ちなみに、しんにゅうの二画目の揺れは、明朝体ではまっすぐな縦線で表記される。手書きの場合(楷書)この部分を明朝体のように書くのも間違った書き方だ。パソコンやスマートフォンなどが身近にあり、気軽にそんな文字ばかり見て育っていく現代のこども達が、ただしい手書き文字を身につけることができるのか、とても不安に思っている。

最後に常用漢字表の「前書き」にある文章を転載しておこう。あいかわらず難しい言い回しだが、点がひとつだろうとふたつだろうと許容する、と書いてある。

表の見方


-->